第1回日本パーキンソン病コングレス(JPC)開催報告

 記念すべき第1回JPCが、2015年6月24日と25日の2日間にわたり、茨城県水戸市の水戸京成ホテルで500人近い参加者をもって開催された。

 会議は、男女各1名の患者さんの司会による進行により、開会挨拶に代わる新しい試みとして行われた中村大会会長と京都大学 高橋良輔先生のオープニングディスカッションで、中村会長の「ほんとうに患者と医師は対等な立場で共同作業が行えるのか?」といった提案によって始まった。  
 発表は、同一テーマを患者さんと医師がそれぞれの立場で行い、その後会場からの質問によりディスカッションを行う、といった新しい試みが取り入れられた。なお、初日の発表テーマと概要は以下によるが、演者名は医療関係者のみとした。

1日目の発表テーマと概要

パーキンソン病の症状の問題点 座長:京都大学 高橋良輔

「伝えることの難しさ」 演者:患者(病歴21年)

 オン・オフ現象のことやスロープよりも階段の方が楽なこととか、パーキンソン病の症状を回りに伝えるのは至難の業。しかも相手がドクターだとさらに難しくなる場合が多い。突進は歩行だけではなく、リズムでも突進するなど、まさに伝えることは表現力である。

「医師が聞き出したい問題症状:何が問題?どの程度?」 演者:みどり野リハビリテーション病院 高橋裕秀

 治療目標→問題把握→治療戦略といった、パーキンソン病の治療の実際について。診療時間に制約のある中、患者の持つ問題点とその程度を把握するため、症状日誌の活用をすすめる。何が問題かの認識は最重要である。

進行期のパーキンソン病の対応 座長:京都大学 高橋良輔

「進行期のパーキンソン病の対応」 演者:日本医科大学 永山寛

 専門医アンケートに基づく発表。薬物治療による患者満足度は動けることにある。レポドパ製剤の分服は日常生活を妨げない程度の服用が必要である。治療優先順位は、1.身体の傾き、2.ウェアリング・オフ、3.幻覚、その他認知症などである。

パーキンソン病とリハビリ 座長:埼玉県総合リハビリテーションセンター 市川忠

「パーキンソン病とリハビリ」 演者:患者(病歴34年)

 リハビリは調子の良いときにやりましょうと言われる中、すくみや座りきり問題等、動けないときにどう動くかが課題。結局リハビリとは、動くことをあきらめずに創意工夫することにある。日常生活においても過度な便利さを避けることが生活リハビリの基本である。アインシュタインも言っているように創造力が大事であり、病気を克服するという姿勢が大事である。

「パーキンソン病のリハビリテーション~オンの時間帯のすくみ足が出現以降の生活を支えるために~」 演者:佛教大学 石井光昭

 オンの時間帯にもすくみ足が出現すると外出に対する不安が強くなるが、日常生活ですくみ足を経験していても、検査場面では中々観察されない。すくみ足の引き金となる社会的障壁を取り除く包括的なリハビリテーションが必要である。

医療関係者と患者のあり方 座長:旭川赤十字病院 吉田一人

「医療関係者と患者のあり方」 演者:患者(病歴9年)

 現在ここで発表できるのは、主治医である国立病院機構宮城病院の久永欣哉先生による細やかな薬の調整と、衰えた筋肉を自宅で強化するストレッチの指導をしていただいた東北福祉大学の中江秀幸先生のリハビリ指導のたまもの。患者が今を楽しく明るく暮らすためには、協力者が必要であり、特に医療従事者の存在が重要と言える。

「在宅療養者のリハビリ実施状況と活動状況調査から考える」 演者:東北福祉大学 中江秀幸

 在宅療養期間の長いパーキンソン病患者のリハビリ実施状況に関する調査結果を基に、よりよいリハビリ従事者と在宅療養者の関係について考える。リハビリが単なる押しつけにならないためにも、例えばカラオケのため、卓球のため、と言った個別の目的性が必要と言える。

フォーラムディスカッション 座長 順天堂大学 服部信孝

「面と向かっては言えないけれど・・・言います」 討論者:患者3名、介護者1名、医師3名

 事前に同名のタイトルで行ったアンケート調査(患者向け389票、患者以外の人向け107票)結果をもとに行われたディスカッションで、大まかに1部と2部によって構成された。  1部は、ウェアリング・オフに関して。薬物療法、リハビリテーション、脳深部刺激療法(DBS)の見地から活発な議論がかわされた。2部では、「本音を語る」と題して、治療の現場における医師と患者とのコミュニケーションの問題、性・性欲に関連する問題、衝動性制御障害による買い物やギャンブルの問題等、通常では扱われにくい問題を取り上げたディスカッションが展開された。

 それぞれのセッションにおいて、時間内では収まらない程活発な質疑が展開され、積み残された質問は1日目終了後に行われる懇親会場へと持ち越された。

 翌日は、初日同様の形式による発表に先立ち、患者・医療関係者によるポスター展示や起業展示、デモンストレーションによって始まった。 なお、2日目の発表テーマと概要は以下に示した。

2日目の発表テーマと概要

パーキンソン病の治療 座長:国立精神・神経医療研究センター病院 村田美穂

「パーキンソン病の治療~患者としてできること~」 演者:患者(病歴40年)-医師でもある-

 患者としてできることは内服治療における工夫とリハビリであるが、内服治療の鍵はL-dopaにある。病気の進行に伴って調子の良い範囲が狭くなっていく中、いい状態を保ち、病気と長くつき合っていくためには、オンをつなぐL-dopaの飲み方の工夫、攻略法が必要である。

「パーキンソン病の治療」 演者:秋田県立病院機構秋田県立脳血管研究センター 前田哲也

 パーキンソン病におけるEBM(Evidence Based Medicine):エビデンスに基づいた医療の重要性と、TMM(Tailor Made Medicine):テーラーメイド医療の必要性について。症例報告2例。

パーキンソン病といかに向き合うか 座長:国立精神・神経医療研究センター病院 村田美穂

「患者としての体験談、家族・妻としての体験談」 演者:患者(病歴20年)、妻

 (患者)発症により右手が不自由になり、最大の不安は仕事を続けられるかどうかだった。その後、自分が変わるしかないと、両手打ちで克服したテニス。病気の進行とともにテニスが出来なくなると写真を始めた。そして、現在に至っている。やることはまだまだあるはずと考えている。  (妻)夫の分までやらなければならないことが山積みで、精一杯の日々。そんな中で考えたことは、自分の幸せと明るい家庭を守ることである。

「如何に向き合うか」 演者:秋田県立病院機構秋田県立脳血管研究センター 前田哲也

 日常生活の活動度の改善のみならず生活の質に対する治療介入が重視されるようになってきている。患者さんにとって大事なのは、病気のことをよく学ぶこと、規則正しく生活改善すること、全てにおいてベストを目指さないこと。そして、家族の協力である。

「心の健康を考えるために役立つ12のヒント」
コメンテーター:順天堂大学医学部附属順天堂医院 田村智恵子(認定遺伝カウンセラー)

パーキンソン病患者の看護・介護 パーキンソン病患者を周りで支える 座長:国立精神・神経医療研究センター病院 村田美穂

「パーキンソン病患者の看護・介護」 演者:国立病院機構宇多野病院 水田英二

 難病対策の改革に向けた取り組みについて(平成27年1月改正)-支援体制、難病医療コーディネーター、就労、難病患者就労サポーター、経済的支援、情報収集・相談など。問題は、制度があってもサービスがない、サービスがあってもパーキンソン病が理解されていないことである。

「パーキンソン病患者の看護・介護-パーキンソン病患者を周りで支える-」 演者:患者(NPOあけび副理事長)

 パーキンソン病、神経難病に特化した「あけび」の紹介。神経難病の仲間が中心になって作った「あけび」は、デイサービス・ワークハウス・交流会を通じて同じ病気の仲間と話し合える場所。服薬・リハビリ・心のケアが3本柱である。

DBSに関する問題  座長:国立精神・神経医療研究センター病院 村田美穂

「DBSに関する問題」 演者:患者(病歴15年)

 2008年に脳深部刺激療法(DBS)を行った。目的は、ペットボトルが持てないほどの振るえの軽減、オン・オフの解消、減薬である。いずれの目的も達成できたが、マイナス面は突進歩行と言語障害。DBSで完治する訳ではなく、治療方法の一つにすぎない。孫を抱くためとか、ゴルフをするためとか、人生の目標を成すために踏み出すための治療として、患者自身が決断すべきである。

「パーキンソン病に対する脳深部刺激療法(DBS)」 演者:順天堂大学 梅村淳

 パーキンソン病における外科治療の歴史は古く、’50年代は外科が主流だった。’60年代からL-dopaによる服薬治療が主流となり、’90年代にDBSが導入された。DBSは薬に代わる治療法ではなく、DBSの導入により作用機序の異なるもう一つの治療法が得られる。
「Q&A」~事前に収集~
決断のポイント:薬物で満足が得られなくなったとき。仕事を続けるためとか生活のためとか、患者さんの社会的背景によって異なる。
病院の決定  :通院可能な施設。
術後の調整  :できる場所が限られている。
手術の痛み  :麻酔(部分)麻酔を行う。
電池     :充電式と電池式がある。充電式は週に1回、1~2時間充電。電池式は4~5年に1回交換。

パーキンソン病研究の進歩  座長:国立精神・神経医療研究センター病院 村田美穂

「パーキンソン病研究の進歩」 演者:順天堂大学 大山彦光

 病態や治療に関する研究は、原因遺伝子の発見、基底核回路の理解、レボドパの発見、種々の治療薬の開発と目覚しく進歩している。パーキンソン病の最新の研究状況や、ICTを利用した在宅コミュニケーションについて。

以下は、企業の共催によるランチョンセミナーである。

パーキンソン病の新しい治療法  座長:京都大学 高橋良輔

「パーキンソン病の新しい治療-主にサプリメントについて-」 演者:順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院 瀬高朝子

 効果の得られたサプリメントと得られなかったサプリメント、現在臨床試験中のサプリメントについて。病気の進行抑制に効果の得られたサプリメントとしては、水素水と還元型コエンザイムQ10があげられるが、いずれも現在臨床確認中。

パーキンソン病を取り巻く環境  座長:京都大学 高橋良輔

「新難病制度発足に伴い『患者団体』・『患者』は何をやるべきか」 演者:患者

 平成27年1月1日から新制度がスタートし、これまでの「重症度基準」だけの認定から「経済的基準」が追加された。新制度のポイントと緊急課題について。

「パーキンソン病を取り巻く環境」演者:埼玉県総合リハビリテーションセンター 市川忠

 新難病制度における課題と治療への影響について。

 最後は、順天堂大学 服部信孝より、今回の総括と次回開催に向けた展望、そしてJPCがパーキンソン病患者とその家族、そして取り巻く全ての関係者による会議であることの再確認が行われた。
 以上で、2日間にわたる全ての議事が終了し、JPC副会長の挨拶とともに閉会となった。 なお、次回の開催は2017年の予定である。